『リベリオン』 | 天井桟敷 映画のはなし

『リベリオン』

アミューズソフトエンタテインメント
リベリオン 反逆者(HD-DVD)
2002年 アメリカ  
原題:EQUILIBRIUM  
監督:カート・ウィマー、ヤン・デ・ボン  
脚本:カート・ウィマー
キャスト:クリスチャン・ベイル、エミリー・ワトソン、テイ・ディグス、アンガス・マクファーデン、ショーン・ビーン

3次世界大戦が終わった近未来、生き残った人類は二度と戦争を起こさないために、戦争の原因となる人間の「感情」というものを排除しようと考える。国家の指導者たちは、感情を抑えるための”プロジウム”という薬を開発しこれを毎日投与することを国民に義務づける。
薬を投与しなかった者、感情を露わにした者たちは、犯罪者と見なされ、直ちに逮捕されるのだった。
国民を監視し逮捕をする任務を請け負う者たちは”クラリック”と呼ばれる。
プレストン(クリスチャン・ベイル)は、”クラリック”の中でもっとも優秀であり、完璧に任務を遂行する。
だからこそ彼は大変に非常な人間だ。
しかし、プレストンは彼の相棒がいわゆる犯罪者であることを知り、以来少しずついまの自分の置かれている状況に疑問を持ち始めるのだった。



いくさっていうものは、やはりやってはいけないわけだから、ではどうすればそれを防げるのかを考えに考えて、挙げ句”感情”をなくしてしまおうという結論にたどりついた近未来のお話なのですが。

確かにすべては”感情”のもつれから、ややこしいことになって、結果それが大々的ないくさを引き起こすわけですから、もういっそ”感情”をなくしてしまおうというのは、極端ではあるけれどもしかしたら、選択肢のひとつなのかもしれんね。

もうね、なんていうか逆ギレですつまるところ。

そんなにもいくさをやって、いっぱいひとをしなせちゃったり、哀しい思いをするのなら、いっそ感情のもつれとかが絶対にないように何も感じないようになって、平穏な暮らしをしようじゃないのまじでというところですな。

感動したり感じたりはできなずに、完全に管理されたおもしろくも何ともない国家だけれど、でも安全ですよとね。

もう、あとはどちらをとるかだよな、本人が。


で、このお話は、安全な暮らしよりも、たとえ争いが起きる原因になるとしても、それでもちゃんと何かを感じていたいぜ、というひとたちが主人公なのですよね。

なにかが、おかしいと思っているひとたち。

彼らは感情をなくすことにとても恐怖していて、その恐怖は逮捕されちゃうかも知れない恐怖よりも遙かに勝る。

そんなね、彼らの思いが、とても切実で必至で、痛いなぁと(こころが)思ったです。


【以下、普通にネタバレで何を言っているのかが不明な文章となっています。ご注意を】





格闘シーンがとにかくかっこよかったです。

プレストン(クリスチャン・ベイル)は、天才殺人機械=優秀なクラリック(警察みたいなものですね)なんですけど、その彼が、何かおかしいと気づき初めて、平和と引き替えに自分たちを管理=支配する国家に、戦いを挑んで乗り込むわけですけど、その時の戦い方がいい。

なんか、この映画の監督が考案したらしい

従来のガン・プレイに東洋武術の“型”を取り入れ、より合理的な戦闘スタイル”ガン=カタ” (あますところなくウケウリ)

というのが、プレストンの得意とする戦闘手段なのですが、あれね実に実にいいと思うのですまじで。

無表情でシュタって、バッタバッタと殺っていくさまは、小気味よすぎて、息をのんでしまって、げふって言ってしまうほど。

いやもうわかったよ、プレストン(涙)と言いそうになったりならなかったり。


最後にプレストンは黒幕である善人ぶっていたけれど実は案の定独裁者だったおじさんのところにたどり着いて、サシで勝負するわけです。

この独裁者のおじさんが、お話の中で、「ガン=カタ」をプレストンに教えた人らしいんですがね、うーん、それにしてはどうにもこうにも気になりました。

おじさん、もう少しだけ強くてもよかったかもしれんです。

プレストンは、この悪のおじさんのところにたどり着くまでに、あんたひとりで何千人殺ったのですか?と言わんばかりの大活躍ぶりを発揮してくれたわけです、その彼が悪のおじさんひとりをやっつけるのに、とっても四苦八苦するのですよ。

悪のおじさんがものすごく強い、明らかに強いのならば解るのですが、どうみてもプレストンの方がつよいのですよね。

悪のおじさんのこと、片手で捻りつぶせそうなのですよね。

映画を観る以上、こちらとしてはできうる限り騙されないといけないのだけども、にしてもねもう少しだけ、

黒幕は強くてもよかったきがするの。
カットわりとかでね。


プレストンが、だんだんとかわっていく過程にどきどきどきどきど。



彼は、最高にして最強のクラリックで、故に洗脳の度合いもそれは壮絶なわけです。

赤だって黒っていうほどに。
その彼が、洗脳されているにもかかわらず、相棒のパートリッジ(ショーン・ビーン)が逮捕の対象だと知ったとき、無表情ながらもとても哀しそうな風情なのですよね。

心をもたない完璧なクラリックでありながら、だけど友情とかそんなものは多少はプレストンにもあったわけだねと、少し安心したのです。

で、このパートリッジの死というのは、思いの外ふかくプレストンにダメージを与えていて、だからこれをきっかけに彼は心がちょっと破綻していって、もしやこれって、いまのこの状態って、おかしいことなのか、なにかが違うのでは、と疑い始めるのですよね。

自分が、正しいと思ったから自ら大切な相棒であるパートリッジを殺したけれど、もしかしたら自分のやったことは取り返しの付かない間違いであったのではないかと、それに気づいていくさまが、かなりぐっときました。

後悔の念に苛まれるのって色っぽいなぁなどと(は?)

この後悔の念に苛まれたプレストンが、踏み込んだ犯罪者のお家で、禁じられている絵画や陶器やら音楽やらの芸術作品を目の当たりにして、そのあまりのすばらしさに涙を流すシーンがとてもきましたね。

芸術に、押さえていた感情・感覚というものに溺れていくですよ、彼は。

こんな感覚がまだ自分に残っていた嬉しさとか、こんな感覚を与えてくれたものを壊したり、それを創った人やそれを愛でた人たちを国家のためとはいえ、殺りまくった自分の罪の深さみたいなものとか、そんな感情がたくさんになってしまって涙がとまれないわけです、彼は。

ここはね、うんうん溺るがいいよそのあなたの殺してきた感情にね(涙)とすごくすごく思ったです。


それにしても、ショーン・ビーン、クラリックの制服が滅茶苦茶ににあっていて、かなりきました。

いい。

そして、殺られるシーン、詩集を捲る彼のては、きれいというしかないだろうね。

いい。



お首にちくっと、痛てっ(汗)
ちぇき。